日本の紙幣には、さまざまな分野において社会に貢献した偉人が描かれますが、ロシアでは人物に限らず、歴史的な価値のある建物や場所が選ばれてきました。ロシアの紙幣は、順に並べると、10、50、100、1000、5000ルーブルの5つの種類の紙幣があります。それらの紙幣に何が描かれているか、と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか?ということで、今回は「ロシアの紙幣」と題しまして、何が描かれているのかをご紹介したいと思います。
※2017/03/05当時レート1ルーブル=1.95792474 円
【10ルーブル札】(約20円)
□舞台―クラスノヤルスク
ロシア連邦シベリア中部に位置する街です。
当時の首相橋本龍太郎とボリス・エリツィン大統の間で行われた、平和条約締結を目的としたクラスノヤルスク合意はまさにエニセイ川の船上で行われました。
□表面―聖パラスケバ聖堂。(Часовня Параскевы Пятницы)
□裏面―エニセイ川のクラスノヤルスク橋およびクラスノヤルスク水力発電所。
【50ルーブル札】(約100円)
□舞台―サンクトペテルブルグ市。
ロシア西部の街で、1914年までロシア帝国の首都として栄え、現在も多くの観光客で賑わっている、ロシアの古都です。
□表面―海戦記念円柱と女性の像。
これらは、ネヴァ川の象徴です。またその背後にはペトロパブロフスクの要塞が見えます。
□裏面―旧サンクトペテルブルグ証券取引所。(Здание биржи)
【100ルーブル札】(約200円)
□舞台―モスクワ市。
人口1200万人を誇る言わずと知れたロシアの首都です。日本との時差は6時間で在モスクワの日本人人口は、およそ1500人。ちなみに、ロシア人の中でモスクワのことをあまり良く思わない人は多いですが、個人的には「東京の人は冷たい」という感覚にすごく近いものを感じます。
□表面―ボリショイ劇場入り口の彫刻。馬車 (колесница) に乗ったアポロンの彫刻が描かれています。
□裏面―ボリショイ劇場前の広場とボリショイ劇場。
【500ルーブル札】(約1000円)
□舞台―アルハンゲリスク市
ロシア北西部の都市で、「大天使の街」という意味を持つ、白海貿易で栄えた土地です。海軍の重要性を考えていたピョートル1世によって海軍軍事基地が置かれました。
□表面―ヨットと海港を背にピョートル1世の像。
□裏面―ソロヴェツキー諸島の修道院。最も価値の高い修道院の一つです。
【1000ルーブル札】(約2000円)
□舞台―ヤロスラーブリ市。
ヴォルガ川沿いに位置する都市で、500ルーブル
に描かれているアルハンゲリスクとモスクワをつなぐ交易路として栄えました。工業の街として有名ですが、歴史地区は世界遺産に登録されています。
□表面―ヤロスラフ1世の像。ロシア人の信仰心を象徴しているそうです。
□裏面―トルチコボの前駆受洗イオアン(洗礼者聖ヨハネ)大聖堂。
【5000ルーブル札】(約10000円)
□舞台―ハバロフスク市。
ロシア極東部に位置する街で、2002年から極東連邦管区が置かれています。地理的関係からアジアとの関わりが深く、ロシアの東の門戸として現在も栄えています。
□表面―ニコライ・ニコラエヴィチ・ムラヴィヨフ=アムールスキー伯爵。東シベリア総督として、ロシアの極
東政策に深く関わり、領土拡大に貢献した人物です。ハバロフスク橋を臨むブロンズ像が描かれています。
□裏面―ハバロフスク橋。全長およそ2700メートルあります。この橋の完成によって、シベリア鉄道が完成しました。
■終わりに
最後までお読みいただきありがとうございます。
個人的に最も日本と異なると感じるところは、ロシアの紙幣には必ずロシアの街の「どこか」が選ばれ、その街を象徴する「何か」が街並みと共に描かれているところです。さらに、その「何か」は外国人が必ずしも知っている場所や建造物でもないのです。
しかし、ロシア人にとって価値があるからこそ紙幣に描かれているわけですから、それらがいったい何なのかを知ることは、ロシア人にとって何が大切なのか、また、何を大切にしていくべきかと考えているのかを知ることの手助けになるような気がします。大げさかもしれませんが、1997年から発行されているこれらの紙幣のデザインを通して、ロシアの歴史とこれからの未来について改めて考えてみようと思いました。